主な対象疾患と治療法
熱傷(新鮮例、陳旧例、熱傷後の瘢痕)
熱湯、高温の料理や油などの高温液体、熱された調理器具や食器、ストーブやアイロンなど熱性個体への接触、ポット・炊飯器の蒸気口への接触、仏壇の蝋燭などの火…日常の様々な場面に熱傷(やけど)を負うリスクが潜んでいます。 熱いものへの接触以外でも、低温熱傷や化学熱傷とよばれるものも存在します。 就寝時のホットカーペットや湯たんぽ、電気あんかなどの長時間接触は低温熱傷を負うことがあるため注意が必要です。低温熱傷では受傷直後は疼痛を感じないため、気づいたときには深い熱傷(やけど)となり手術を要することがあります。 化学熱傷は、酸・アルカリ・有機溶媒などの化学物質を含む洗浄剤・漂白剤・化学薬品・セメントなどが皮膚へ誤ってかかることで起こります。すぐに大量の水道水で洗浄し、できるだけ早めに医療機関を受診する必要があります。
治療
浅い熱傷(やけど)であれば、多くの場合軟膏治療で治ります。しかし、深く広範囲の熱傷(やけど)であれば体の他の箇所から皮膚を採取して移植する、植皮術が必要となる場合があります。
また、傷が治っても、きずあとが盛り上がったり、皺が寄ったりして目立ってしまうことがあります。これを「熱傷後瘢痕」と呼びます。この熱傷後瘢痕が、手足の関節部にあると、十分に曲げ伸ばしできない状態、「瘢痕拘縮」となってしまうことがあります。このような症状に対して、ステロイドの貼付剤や局所注射、手術によって治療を行います。
また、傷が治っても、きずあとが盛り上がったり、皺が寄ったりして目立ってしまうことがあります。これを「熱傷後瘢痕」と呼びます。この熱傷後瘢痕が、手足の関節部にあると、十分に曲げ伸ばしできない状態、「瘢痕拘縮」となってしまうことがあります。このような症状に対して、ステロイドの貼付剤や局所注射、手術によって治療を行います。
顔面外傷(軟部組織損傷、鼻骨骨折、頬骨骨折など)
交通事故や仕事やスポーツ中の事故、転倒など、日常生活で予期せず大きな怪我を負ってしまうことがあります。このような怪我を「外傷」と呼びます。家庭では手に負えないような大きな外傷、また大きい外傷かどうか判断できない場合には医療機関に速やかに受診する必要があります。皮膚・脂肪・筋肉などの軟部組織の傷は、6~8時間以上(顔面は24時間以上)経過すると細菌が増殖してしまうため、縫合できなくなります。また骨折は2週間以上経過すると固まってしまい、骨折した骨を正しい位置へ動かせなくなります。命にかかわるような緊急の疾患ではありませんが、下記のような後遺症を残すことがあります。また、入院病床や手術室の確保が必要ですので、受傷直後の受診をおすすめします。
考えられる後遺症状
軟部組織損傷(顔面)
- ・眉毛、目、鼻、口など顔のパーツが傷跡によって引っ張られて、容貌が変わってしまう
- ・瞼の傷が固く縮み、目が閉じず、ドライアイや角膜障害がおこる
- ・唇の傷は大きなものであれば口が開きづらい、食事の際にこぼれてしまう
鼻骨骨折
- ・曲がった鼻(斜鼻)、低くへこんだ鼻(鞍鼻)となり固まってしまう
頬骨骨折
- ・頬や鼻、歯肉の知覚が鈍くなる(知覚障害)
- ・口が開きづらくなる(開口障害)
- ・眼球の運動障害が起こり、物が二重に見える(複視)
- ・目が落ち窪む(眼球陥凹)
検査・治療
軟部組織損傷(顔面)
局所麻酔を行い、砂利などの汚れをしっかりと除去します。これは、細菌を除去するとともに、皮膚の中に異物が残ることによる外傷性の刺青を予防するためです。その後、縫合が必要な傷は縫合を、縫合できない傷は軟膏や創傷被覆材で処置を行います。
局所麻酔を行い、砂利などの汚れをしっかりと除去します。これは、細菌を除去するとともに、皮膚の中に異物が残ることによる外傷性の刺青を予防するためです。その後、縫合が必要な傷は縫合を、縫合できない傷は軟膏や創傷被覆材で処置を行います。
鼻骨骨折
CT検査で診断します。当院では基本的に全身麻酔で2週間以内に手術を行います。希望があれば局所麻酔や神経ブロック麻酔でも対応は可能です。鼻腔内に器具を挿入し、超音波検査で骨折部を確認しながら整復を行います。術後は鼻腔内ガーゼ(約1週間)と鼻の上に板状のプレート(約1か月間)を置いて後戻りを予防します。
CT検査で診断します。当院では基本的に全身麻酔で2週間以内に手術を行います。希望があれば局所麻酔や神経ブロック麻酔でも対応は可能です。鼻腔内に器具を挿入し、超音波検査で骨折部を確認しながら整復を行います。術後は鼻腔内ガーゼ(約1週間)と鼻の上に板状のプレート(約1か月間)を置いて後戻りを予防します。
頬骨骨折
CT検査で診断します。複視の可能性がある場合、眼科を受診してもらいます。2週間以内に全身麻酔で手術を行います。下瞼、眉毛の外側、上唇の裏(粘膜)など、顔のパーツの輪郭や口の中など傷跡が目立たない箇所を切開して骨折した骨にアプローチします。そこに器具を挿入し、整復を行います。骨同士をプレート(チタンプレート、吸収性プレート)で固定するため、術後はギプス装着などは行いません。チタンプレートで固定する場合には、数か月後にプレートを除去する手術が必要となります。
CT検査で診断します。複視の可能性がある場合、眼科を受診してもらいます。2週間以内に全身麻酔で手術を行います。下瞼、眉毛の外側、上唇の裏(粘膜)など、顔のパーツの輪郭や口の中など傷跡が目立たない箇所を切開して骨折した骨にアプローチします。そこに器具を挿入し、整復を行います。骨同士をプレート(チタンプレート、吸収性プレート)で固定するため、術後はギプス装着などは行いません。チタンプレートで固定する場合には、数か月後にプレートを除去する手術が必要となります。
四肢・体幹の軟部組織損傷
交通事故や仕事やスポーツ中の事故、転倒など、日常生活で予期せず大きな怪我を負ってしまうことがあります。このような怪我を「外傷」と呼びます。家庭では手に負えないような大きな外傷、また大きい外傷かどうか判断できない場合には医療機関に速やかに受診する必要があります。皮膚・脂肪・筋肉などの軟部組織の傷は、6~8時間以上経過すると細菌が増殖してしまうため、縫合できなくなります。
当科では、できる限り後遺症を最小限に抑え、傷跡を目立たなくするように縫合や処置を行い、治癒後のケア方法をお伝えします。
当科では、できる限り後遺症を最小限に抑え、傷跡を目立たなくするように縫合や処置を行い、治癒後のケア方法をお伝えします。
考えられる後遺症
傷が赤黒く盛り上がり、かゆみや痛みを伴う肥厚性瘢痕・ケロイド。また、瘢痕が手足の関節部にあると十分に曲げ伸ばしできない状態「瘢痕拘縮」となってしまうことがあります。このような症状に対して、ステロイドの貼付剤や局所注射、手術によって治療を行います。
検査・治療
骨折がないかどうか、必要時には整形外科を受診してもらいます。局所麻酔を行い、砂利などの汚れをしっかりと除去します。これは、細菌を除去するとともに、皮膚の中に異物が残ることによる外傷性の刺青を予防するためです。その後、縫合が必要な傷は縫合を、縫合できない傷は軟膏や創傷被覆材で処置を行います。
頭頚部の先天異常(副耳・耳瘻孔・耳垂裂・先天性眼瞼下垂症など)
副耳
生まれつき頬や耳の前がいぼ状に突起したものです。片側が多いですが、両側に認めることもあります。細長く、軟骨を含まないものは、生後すぐに糸で根本をしばって自然脱落させることもあります。軟骨を含むものや自然脱落させても皮膚の隆起が残ってしまったものは、全身麻酔の安全性が高まる1歳前後で手術を行うことが多いです。また、特に治療しなくても問題はないため、成人するまでそのままの方もおられます。成人になれば、局所麻酔でも手術は可能です。耳瘻孔
生まれつき耳の周囲に小さな穴があり、その奥に管が耳介軟骨で終わっているものです。特に問題なく過ごされる方もおられますが、細菌が入り込んで感染を繰り返すことがあります。感染すると膿が溜まり、切開や抗菌薬の内服が必要となることがあります。耳瘻孔の感染がみられた場合には、手術で耳瘻孔の摘除をおすすめします。耳垂裂
生まれつき耳たぶ(耳垂)が割れている状態です。1歳前後に全身麻酔で手術を行うことが多いです。組織量が不足することがおおく、やや小さな耳たぶ(耳垂)の仕上がりになることが多いです。成人では、局所麻酔でも手術が可能です。先天性眼瞼下垂症
まぶたが開けにくく、正面を見たときに黒目にまぶたがかかっている状態です。生まれつきのものを先天性眼瞼下垂症と言います。生まれつきまぶたを挙げる筋肉の力が弱い・まぶたを挙げる筋肉を支配している神経に支障があるなどが考えられます。瞼を挙げる力がある程度認められる場合には、まぶたを挙げる筋肉をたくし上げる、挙筋前転術を行うことがあります。まぶたを挙げる力がほとんど認められない場合には、大腿筋膜という組織を紐状に加工し、まぶたに移植する大腿筋膜移植術を全身麻酔で行います。体幹の先天異常(陥没乳頭、臍突出症、臍ヘルニア、副乳など)
陥没乳頭
乳頭が突出せずに、引き込まれている状態です。出産後、赤ちゃんが乳頭をくわえられないために授乳ができず、母乳が滞って乳腺炎の原因となることがあります。軽症であれば吸引器を用いますが、それでも改善を認めない重症な場合には手術で陥没した乳頭を引き出す必要があります。臍突出症
生まれた直後にへその緒が切られ、乾燥脱落した断端が収縮して凹んだ状態が正常な臍です。うまく臍として凹みができずに、皮膚が余って突出した状態を臍突出症と呼びます。見た目に気になるようであれば手術を行います。全身麻酔で手術を行うことが多いです。臍ヘルニア
赤ちゃんの臍の緒が腹腔内から腹直筋の間を貫いて体外へ出る部分を臍輪と呼びます。この臍輪が閉じずに、腹腔内容物が腹膜に包まれた状態で脱出した状態が臍ヘルニアです。9割以上の方は1歳前後で改善しますが、改善がみられない場合には臍輪を閉じて臍を形成する手術が必要となります。手術は全身麻酔で行うことが多いです。副乳
乳房とは別に、生まれつき過剰な乳房を認めることがあり、これを副乳と呼びます。腋の下から正常乳頭を通り、太ももの内側までのライン上に認めることが多いと言われています。生理の時に大きくなったり、痛みを伴うことがあります。症状があるときには手術で摘出することもあります。副乳は脂肪の中に存在し、周囲の組織と見分けがつきにくいことも多く、時間を要する場合があり、全身麻酔での手術をおすすめしています。母斑、良性腫瘍(色素性母斑、脂腺母斑、脂肪腫、粉瘤、石灰化上皮腫など)
母斑、良性腫瘍では、悪性腫瘍とは違い周囲の組織に浸潤・転移しないため、臨床的に良性である可能性が高ければ手術で摘出せずに経過観察とする場合もあります。診断を確定するためには腫瘍の摘出を行い、病理診断を行う必要があります。
検査・治療
術前に体表超音波検査やMRI検査を行い、腫瘍の広がりや性状を調べます。腫瘍の大きさや部位に応じて局所麻酔手術か全身麻酔手術かを決定します。摘出した腫瘍を病理検査へ提出し、1~2週間後に確定診断をお伝えします。
悪性腫瘍関連(主に乳房再建、乳輪・乳頭再建術)
乳房再建
乳癌に対する乳房全摘術を行われる方で乳房再建の適応のある場合には、乳腺外科より当科へ紹介があります。当科では、乳癌を摘出時に切除され、不足した乳房の皮膚を伸ばして膨らませる目的で組織拡張器(ティッシュ・エキスパンダー)挿入をまず行います。乳房全摘術を行うときに同時に行うことが多いですが、後日でも再建は可能です。その後6か月程度の期間をおいて組織拡張器を取り出してシリコンでできた乳房インプラントや自家組織(広背筋皮弁など)を挿入し、形を整えます。1回の手術にかかる入院期間は2週間程度です。
乳輪・乳頭再建術
乳癌手術で失った乳輪・乳頭の再建が可能です。乳房の皮膚を使い局所皮弁という方法で乳頭を作成する方法と、反対の乳頭が大きい場合には半分程度そちらからもらい移植する方法があります。乳輪は、乳房の皮膚を丸くドーナツ状にくり抜き太ももの付け根の色が濃い皮膚を採取し移植します。特に希望がなければ全身麻酔で行い、入院期間は5~7日間程度です。肥厚性瘢痕、ケロイド(成熟した瘢痕やピアスケロイドを含む)
怪我をした際に、きずあとの線維成分が過剰に増えると、ケロイドや肥厚性瘢痕という状態になります。肥厚性瘢痕とケロイドの違いは傷の範囲を超えるか超えないかで見分けています。ケロイドは軽微な傷でも、傷の範囲を超えて大きく増殖しますが、肥厚性瘢痕は深い傷や、治りが悪い場合に発症し、傷の範囲を大きく超えて増殖することはありません。
これらは、見た目は赤黒く硬く、盛り上がりがみられます。痛みやかゆみを伴うことが多いです。肥厚性瘢痕であれば経過観察でも1-2年で軽快しますが、ケロイドは数十年かかると言われています。原因としては、傷の深さ、治るはやさ、傷にかかる力、女性ホルモン、高血圧、全身の炎症、飲酒・運動、遺伝要因が言われています。
これらは、見た目は赤黒く硬く、盛り上がりがみられます。痛みやかゆみを伴うことが多いです。肥厚性瘢痕であれば経過観察でも1-2年で軽快しますが、ケロイドは数十年かかると言われています。原因としては、傷の深さ、治るはやさ、傷にかかる力、女性ホルモン、高血圧、全身の炎症、飲酒・運動、遺伝要因が言われています。
治療
テープ剤などによる圧迫、ステロイド貼付剤、抗アレルギー薬の内服、ステロイド局注、切除+電子線照射などがあります。外科的に切除するのみでは、切除前よりも増悪するとも言われており、再発を抑制するため電子線照射を組み合わせることが多いです。当科では電子線照射は行えませんが、保存治療を行うことで改善する例も多いため一度ご相談下さい。
その他(後天性眼瞼下垂症、腋臭症、毛巣洞、陥入爪、リンパ浮腫など)
後天性眼瞼下垂症
まぶたが十分に上がらない状態を眼瞼下垂と言います。まぶたは、上眼瞼挙筋やミュラー筋という筋肉が腱膜を介して瞼の中にある瞼板と連結しこれを引き上げることで上がります。加齢性変化により、この腱膜がたるむことで筋肉の力が瞼板にうまく伝わらなくなることでまぶたが上がりにくくなります。また、瞼の皮膚がたるんで視界をさえぎったり筋肉自体の筋力の衰えも原因とされています。眼瞼下垂は眠たい印象を与えたり、頑張ってまぶたを挙げようとして額の筋肉を使うため眉の位置が上がり、額の皺が深くなったり、前が見えにくいために顎を上げてしまう癖が出てきます。また、頭痛・肩こりの原因となります。治療
テープ剤などによる圧迫、ステロイド貼付剤、抗アレルギー薬の内服、ステロイド局注、切除+電子線照射などがあります。外科的に切除するのみでは、切除前よりも増悪するとも言われており、再発を抑制するため電子線照射を組み合わせることが多いです。当科では電子線照射は行えませんが、保存治療を行うことで改善する例も多いため一度ご相談下さい。
腋臭症
腋から悪臭がする「わきが」と呼ばれるもので、汗を分泌する汗腺のひとつであるアポクリン腺の分泌亢進が原因と考えられています。悪臭は、このアポクリン腺から分泌される汗に含まれる脂質・タンパク質が皮膚の細菌により分解されて起こると言われています。治療
まずは不規則な日常生活を見直したり、腋毛の処理や制汗剤を用いることから始めます。また、ボツリヌス毒素の局注や塩化アルミニウム外用なども一定の効果が得られるとされています。当科では行っておりませんが、マイクロ波によりアポクリン腺の破壊する機器の有効性も示されています。
このような保存的治療でも改善が得られない場合には、当科では腋の毛が生えそろう第二次性徴を待って手術を計画します。手術は、腋の皮膚に1~2本の切開を加え、腋の皮膚を裏返して、腋の毛が生えている範囲に存在するアポクリン腺を切除します。手術をすれば90%くらいは悪臭が減少すると言われていますが、逆に言えば悪臭が少しは残ってしまうと考えられます。また、皮膚が薄くなるため、皮膚壊死や血種のリスクがあり、また術後も皮膚のひきつれ感や瘢痕が残りますので手術は慎重に検討する必要があります。
このような保存的治療でも改善が得られない場合には、当科では腋の毛が生えそろう第二次性徴を待って手術を計画します。手術は、腋の皮膚に1~2本の切開を加え、腋の皮膚を裏返して、腋の毛が生えている範囲に存在するアポクリン腺を切除します。手術をすれば90%くらいは悪臭が減少すると言われていますが、逆に言えば悪臭が少しは残ってしまうと考えられます。また、皮膚が薄くなるため、皮膚壊死や血種のリスクがあり、また術後も皮膚のひきつれ感や瘢痕が残りますので手術は慎重に検討する必要があります。
毛巣洞
おしりの中央にできる小さな穴で、赤く化膿して痛みを伴うことがあります。原因としては、おしりの毛が皮膚に長時間の座位などで皮膚へ刺さることでできるとされています。多毛の男性に多いと言われてきましたが、毛が薄くやわらかい女性でもみられ、主に毛の生える方向が原因とも考えられます。放置すると感染をくり返し、皮膚に埋入した毛が皮膚の下に入り込み長いトンネルをつくったり、膿瘍を形成します。治療
感染が軽度であり感染を繰り返していなければ抗生剤内服で経過をみることもありますが、根本治療は手術で病巣を除去することになります。放置すると、病巣が大きくなり、手術で大きな皮膚や脂肪の不足が生じますので、単純に縫合で閉じることができずに、皮弁術や植皮術が必要になります。
陥入爪
爪の端が皮膚に食い込んで、痛みや腫れ、感染を起こした状態をいいます。深爪や先の細い靴の着用が原因となることが多いです。治療
まずは深爪にならないよう爪切りの方法、靴の選択、足の衛生管理などをお伝えします。また疼痛改善のために、爪と皮膚の間に隙間をつくるような処置や超弾性ワイヤーなどによる爪の矯正を行っていきます。それでも改善しない場合や希望があるときには手術を行います。爪の状態に応じて手術方法を検討します。
リンパ浮腫
血液のほとんどは心臓により動脈を通り、体全体に行き渡ったのちに静脈血として回収され、心臓へと戻ります。この一部はリンパ液として組織に染み出します。リンパ液はリンパ管を通って、心臓へ戻りますが、このリンパ管が障害されてリンパ液が滞った状態をリンパ浮腫と言います。原因としては、癌手術の際のリンパ節切除が多いですが、特発性と言われるリンパ管機能が弱いことによって生じるものもあります。リンパ浮腫になると、リンパ管が障害された部位から先の四肢にむくみが生じ、太くなったり、だるさや張り感、痛みを感じることがあります。またバリア機能も低下するため蜂窩織炎になりやすくなります。
治療
保湿による皮膚のスキンケア、弾性スリーブや弾性ストッキングによる圧迫療法、セラピストによるリンパドレナージ、運動療法といった「複合的理学療法」が基本となります。このような複合的理学療法を早期から開始すると改善や維持が可能となることが多いですが、それでも増悪傾向がみられる場合には速やかに手術療法を検討します。手術は、患肢の皮膚に4-5か所、2~4㎝の切開を加え、顕微鏡でリンパ管と静脈を探し、これらを吻合します。このことにより一部のリンパ液はリンパ管ではなく静脈を通って心臓に戻ることができるようになります。手術療法は根治療法ではなく、蜂窩織炎の頻度が少なくなったり、四肢の太さが多少改善したり、だるさが軽減するなど、日常生活における症状の軽減に一定の効果が期待できると考えられます。