主な対象疾患と治療法
検尿異常
治療
尿蛋白、潜血が陽性の場合、それが異常であるかの判断が必要となります。尿潜血より尿蛋白が陽性であるほうが、将来的に腎機能障害をきたす可能性が高くなることが報告されています。一般的に発熱、激しい運動をした後などには尿蛋白が陽性となる場合があり、生理的なもので異常ではありません(良性蛋白尿といいます)。早朝起床時の中間尿で尿蛋白、潜血が陽性である場合、異常と判断します。
腎炎
治療
腎炎には急性糸球体腎炎、慢性糸球体腎炎、急速進行性糸球体腎炎等があり、さらに組織学的には様々な型に分類されます。また、全身性エリテマトーデスに合併するループス腎炎のように、2 次性腎炎と呼ばれる全身の病気の一部分症として発症するものもあります。一部の特殊な腎炎(例:間質性腎炎)を除いて、基本的に蛋白尿、潜血尿が必発であり、確定診断には組織検査、とり わけ腎生検が必要です。
急性腎不全
治療
原因の代表的なものとして、薬剤(抗生物質、NSAIDs、造影剤)、脱水などがありますが、急速進行性糸球体腎炎やコレステロール塞栓症など、高齢化社会を反映した疾患も増加している印象があります。いつまでが腎機能が正常で、どれくらいの速度で腎機能障害が進行しているかが重要となります。すなわち、病歴が診断の要となります。
慢性腎不全、慢性腎臓病(CKD)
治療
腎臓の機能が徐々に進行性に低下していく状態を慢性腎不全と言います。それが進行し、尿毒症が出現して、腎代替療法を施行しないと死へと至る状態を末期腎不全と呼びます。末期腎不全の原疾患としては糖尿病が最も多く、次に慢性糸球体腎炎、腎硬化症(動脈硬化)と続きます。食事療法と降圧療法が主体で、塩分・蛋白制限、血圧130/80mmHg 以下に保つことが重要です。 近年、腎不全の前段階からの管理が重要であることから、慢性腎臓病(CKD)という概念が提唱されています(診断名ではありません)。本邦の疫学調査では、概算糸球体濾過率(eGFR)60ml/分 /1.73m2 の 成 人 人 口 は 1,098 万 人で、50ml/ 分/1.73m2 未満では 317 万人、これに加え尿蛋白陽性患者が 274 万人存在します。すなわち、600 万人が介入が必要な CKD 患者です。いっぽう、腎臓専門医は6,000 名程度しかおらず、腎臓専門医だけで CKD 患者を管理することは不可能で、病診連携が重要となります。そこで、日本腎臓学会が提唱している病診連携システム案があります。当院でもかかりつけ医の先生方と病診連携を密に行い、ともに診療していくことで、なるべく多くの患者さんを診療することができるよう留意しています。
末期腎不全
治療
末期腎不全にいたった場合、腎臓の代わりをする治療、すなわち腎代替療法が必要となります。腎代替療法には腹膜透析、血液透析(通院、在宅)、腎移植(生体、献腎)があります。近年では、「包括的腎代替療法」という概念が提唱されています。 自分の腎臓だけでは体の恒常性が保てないため腎代替療法を開始するのですが、開始後も残腎機能が長く保持された患者の生命予後がいいことが分かっています。腹膜透析のほうが、残腎機能が保持されやすいという利点を生かし、末期腎不全にいたった時に、まず腹膜透析を行い、残腎機能が低下した時点で血液透析や腎移植へと移行するという、組み合わせの治療を行うことにより生命予後を改善しようという取り組みです。当院でもこの概念をもとに、透析療法を行っています。