「口から食べる」機能のおはなし ~Medical Information~

「むせる」は、食べたり飲みこんだりする機能の低下のサインかもしれません

「むせる」、「痰が絡む」、「薬が飲みづらい」。周りにそんな方がいないでしょうか。老化や様々な疾患により体の機能が低下するように、食べたり飲み込んだりする機能である摂食嚥下(せっしょくえんげ)機能も低下します。むせるなどの症状はそのサインかもしれません。私たちの口や喉のど、気管、食道の構造は図1 のようになっており、呼吸と嚥下は共通部分を使うため、絶妙にコントロールされています。しかし、摂食嚥下機能が低下すると、コントロールがうまくいかず、飲み込んだものが誤って気管に流れ込んだり(誤嚥:ごえん)、喉に詰まり(窒息:ちっそく)、命を脅かすこともあります。

摂食嚥下機能の低下(摂食嚥下障害)

摂食嚥下機能障害の原因は様々です(表1)。
原因に応じた治療などによって摂食嚥下の問題が解決することもあれば、原因疾患の治療を急ぐこともあるため、図2 のような流れで診察し、原因や重症度に応じた対応を進めます。専門的機能検査は、摂食嚥下障害に精通した耳鼻咽喉科などの医師や歯科医師が行い診断を進めます。
摂食嚥下障害は改善しないこともあります。このような見通しを立てるためには、専門的に診断し、原因や重症度を明らかにすることが必要です(図3)。摂食嚥下障害が改善しない場合、誤嚥や窒息のリスクを減らし、少しでも安全に口から食べるために、食形態や水分のトロミを工夫したり、食事をする際の姿勢を調整したりします。また、重度の場合は口から食べることにより誤嚥や窒息で命を落とす危険性が高くなるため、栄養や水分の摂取方法を慎重に検討しなければなりません。

当院の摂食嚥下障害の診療について

入院中に摂食嚥下機能の低下が疑われる場合は、随時、専門の歯科医師が診察し、機能検査や嚥下指導などを行っています。原因疾患の精査や治療が必要な場合は各診療科の医師と連携し、リハビリテーションは言語聴覚士が担当します。
また、2015年に摂食嚥下外来を開設しました。全国的にもこのような専門外来は少ないですが、摂食嚥下機能に不安のある方の相談窓口として、これまで1566 名の患者さんが受診されました(2022年1月末時点)。お困りの場合は、まずかかりつけ医へご相談ください。

2022/10/1 摂食嚥下外来/歯科口腔外科医長 金城 亜紀